大岩3区 暗誦の会テキスト
<本文>
方丈記 鴨長明
行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、
かつ消えかつ結びて久しくとゞまるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかく
の如し。
玉しきの都の中にむねをならべいらかをあらそへる、たかきいやしき人の
すまひは、代々を經て盡きせぬものなれど、これをまことかと尋ぬれば、昔ありし
家はまれなり。あるいは去年焼けて今年造れり、あるいは大家ほろびて小家
となる。
住む人もこれにおなじ。所もかはらず、人も多かれど、いにしへ見し人は、
二三十人が中に、わづかにひとりふたりなり。あしたに死し、ゆふべに生るゝならひ、
たゞ水の泡にぞ似たりける。
知らず、生れ死ぬる人、いづかたより來りて、いづかたへか去る。又知らず、
かりのやどり、誰が爲に心を惱まし、何によりてか目をよろこばしむる。
そのあるじとすみかと、無常をあらそひ去るさま、いはゞ朝顏の露にことならず。
あるいは露おちて花のこれり。のこるといへども朝日に枯れぬ。あるいは花しぼみて、
露なほ消えず。消えずといへども、夕べを待つことなし。
<読み方>
ほうじょうき かものちょうめい
ゆくかわのながれはたえずして、しかももとのみずにあらず。よどみにうかぶうたかたは
かつきえかつむすびてひさしくとどまるためしなし。よのなかにあるひととすみかと、またかく
のごとし。
たましきのみやこのうちに、むねをならべいらかをあらそえる、たかきいやしきひとの
すまいは、よよをへてつきせぬものなれど、これをまことかとたずねれば、むかしありし
いえはまれなり。あるいはこぞやけてことしつくれり。あるいはおおいえほろびてこいえ
となる。
すむひともこれにおなじ。ところもかわらず、ひともおおかれど、いにしえみしひとは
にさんじゅうにんがうちに、わずかにひとりふたりなり。あしたにしに、ゆうべにうまるるならい
ただみずのあわにぞにたりける。
しらず、うまれしぬるひと、いずかたよりきたりて、いづかたへかさる。またしらず
かりのやどり、たがためにこころをなやまし、なにによりてかめをよろこばしむる。
そのあるじとすみかと、むじょうをあらそうさま、いわばあさがおのつゆにことならず。
あるいはつゆおちてはなのこれり。のこるといえどもあさひにかれぬ。あるいははなしぼみて
つゆなおきえず。きえずといえどもゆうべをまつことなし。
(495字)
<意味概略>
(作成中です)
<朗読例>
http://www.youtube.com/watch?v=FQ5u-UMMnBw
Youtube に投稿された朗読です。