大岩3区暗誦の会テキスト


万葉集   富士の山を望む歌 山部赤人(やまべのあかひと)

天地(あめつち)の (わか)れし時ゆ (かむ)さびて 高く(とうと)き 駿河(するが)なる 
富士の
高嶺(たかね)を (あま)(はら) ()()け見れば 渡る日の 
影も
(かく)らい 照る月の 光も見えず 白雲(しらくも)も い()きはばかり (とき)じくそ 
雪は降りける 語り
()ぎ 言い()()かん 富士の高嶺(たかね)

   反歌(はんか)

田子(たご)(うら)ゆ うち()でて見れば ま(しろ)にそ 富士の高嶺(たかね)に 雪は降りける




<読み方>
ふじのやまをのぞむうた やまべのあかひと

あめつちの わかれしときゆ かむさびて たかくとうとき するがなる
ふじのたかねを あまのはら ふりさけみれば わたるひの
かげもかくらい てるつきの ひかりもみえず しらくもも
いゆきはばかり ときじくそ
ゆきはふりける かたりつぎ いいつぎ ゆかん ふじのたかねは
 はんか
たごのうらゆ うちいでてみれば ましろにぞ ふじのたかねにゆきはふりける
(170字)

<解釈>
天と地が分かれた時から、神々しく 高く貴い駿河の国の富士の高嶺を
大空高く仰ぎ見ると、その高さに遮られて、空を渡る日の光も隠れ、
照る月の光も見えず、白雲も行きためらい、季節の区別なく いつも雪が
降り積もっている。
この富士の高嶺の高く貴い姿を、後の世の人々にも、まだ見ぬ人々にも、
永遠に語り告ぎ、言い継いでいこう。

田子の浦の 眺めのきくところへ出て、ふと大空を見ると、
  真っ白に 富士の高嶺に雪が降り積もっている
       まことに美しくも気高い姿であることよ

       参考 : 南信一 著 「 万葉集駿遠豆 」 他 

<参考>
この歌の石碑が富士市田子浦港にあります。↓
(万葉集は、実際は写真のように、全部漢字で書かれています)